春の訪れとともに草花が芽吹きはじめると、陽気にさそわれて外へ散歩にでかけたくなりますね。
春は子どもの五感や好奇心を刺激するものがいっぱい!
「百聞は一見に如かず」と言いますが、実際に目で見て、触れて、においを嗅いで体験することに勝る学びはありません。
しかしそれは、日々の忙しい生活の中で親が「体験させてあげよう」という意識を強く持っておかなければ、知らずに通り過ぎてしまうことでもあるのです。
とある体験から私はそのことを強く感じたのですが、その「とある体験」については最後に書き残すとして…。
今回の記事では、子どもの「見てみたい!」「やってみたい!」という好奇心を刺激してくれる絵本を4冊ご紹介します。
「読んでもらって楽しかった」で終わるのではなく、その先の「やりたい!」という行動にまでつながるような絵本を紹介していきたいと思います。
ぼくのもものき
この本は、お母さんと一緒に買い物に出かけた「ぼく」が、1本の桃の木を買ってもらうところから始まります。
マンションのベランダで、お母さんとぼくが1本の桃の木を大切に育てていく。
やがてたくさんの花が咲き、桃の実がだんだん膨らんでくるのを楽しみに眺める毎日。
実った桃をたくさん食べられる…というぼくの期待も膨らんでいくのですが、事はそう簡単に運びません。
たくさん実るはずだった桃が減ってしまったり、虫がついてしまったり…。
桃の実が減ってしまうのはなぜ?
虫がついたときはどうすればいいの?
そんな大切なことも、勉強させられている感じではなく、物語を楽しむ中で自然と頭に入ってくるのです。
この絵本の素晴らしいところは、「都会のマンションのベランダで育つ桃の木の成長」を絵本の中で追体験していけるところ。
決してどこか遠くの出来事ではない、やる気があれば誰でもできる、そんな身近なお話。
「桃の木を育ててみたい!」と子どもが興味を示せば、親子で挑戦してみる絶好のチャンスになります。
うまく育てばかけがえのない成功体験になるし、失敗しても、「桃の木を育ててみたことがある」という経験は忘れられない思い出になるでしょう。
ばばばあちゃんのよもぎだんご
この絵本を買って読み始めてから、我が家では毎年のようによもぎ団子を作るようになりました。
よもぎだんごの作り方を、物語を読み進めながら理解できる楽しい絵本です。
よもぎって、公園でも道端でも、探せばどこにでも生えている身近な草なんですよね。
「え?!こんな普通の草、食べられるの?!」と、子どもにとってはちょっとした衝撃が走ると思います。
4~5月ごろに伸びてくる柔らかい新芽を摘んできて、よく洗って、あく抜きして、ゆでて、すり潰して…と、なかなか手間がかかります。
「スーパーで売ってるよもぎ団子買ってきたほうが早いじゃん!」って言いたくなります。
でも、スーパーで買ってきたよもぎ団子を食べるのと、自分で葉っぱを摘んでくるところから作り上げたよもぎ団子を食べるのとでは、経験値がぜんっぜん違うのです。
摘んできたよもぎの葉の柔らかい手触り、色、香り。
子どもは五感をフル活用して感じ取っていきます。
ゆでてすり潰したよもぎを、上新粉に混ぜて、こねて、丸めて、ゆでる。
そんな作業は子どもたちにとって何より楽しい遊びであり、学びでもあるのです。
はっきり言って、上新粉を買うお金ぐらいしかかかりません。
旅行や遊園地に連れて行かなくても、こんなコスパのいい娯楽があるなんて!親にとってもちょっと面倒ではあるけど、悪くないですよね。
まずはこの絵本を読んで、よもぎってどんな葉っぱなのか、探してみるだけでも楽しい。
たべられるしょくぶつ
「ばばばあちゃんのよもぎだんご」を読んでみると、「意外と身近なところに食べられる草が生えているんだな」ということが分かります。
こちらの絵本は、そこで芽生えた好奇心をさらに広げてくれる本、とでも言うべきでしょうか。
普段の食事で食べている野菜たちも、種や苗から育ち、葉が出て、花が咲く「植物」であること。
どうやって育つの?どこに生えているの?どの部分を食べているの?
そんな子どもの探究心を満たしてくれる絵本が一緒に本棚に並んでいるといいな、と思い紹介してみました。
こちらは「ばばばあちゃんのよもぎだんご」のように物語調ではなく、どちらかというと図鑑に近い感じの絵本。
見開き1ページの中に、種や苗から野菜がだんだん大きくなり、最後また種ができるところまで収まるように描かれています。
子どもと一緒に家庭菜園を始めてみたい、と考えているにはぜひ読んでほしい。
我が家は田舎にあるため庭が広く、毎年失敗を繰り返しながらいろいろな野菜を植えて育ててみます。
種から育て、収穫して食卓に並べ、美味しくいただいたらまた種をとって翌年植える、というサイクルを経験するのは、絵本だけでは得られない大きな学び。
この本を読めば、「やってみたい!」と子どもも興味をもってくれるかもしれませんね。
たんぽぽ
1冊まるごと「たんぽぽ」について描かれた絵本です。
1つの植物だけを取り上げ、とことん掘り下げて描いてくれているのだから、図鑑を見るより詳しくなれてしまいます。
それに、たんぽぽって子どもにとってすごく身近で、不思議な植物ではないでしょうか?
見つけやすく、手に取りやすく、観察もしやすい。黄色い花から白い綿毛に姿を変えていく様子も魅力的で、惹きつけられる。
この絵本はもう初版発行から40年以上が経過していて、平山和子さんの描かれる絵が圧巻。
まるで今そこにあるように、写実的で美しい。思わず手を伸ばして取りたくなってしまうほどのリアルさ。本物のたんぽぽを摘んできて、見比べてみたくなる。
子どもの絵本に描かれている絵は一種の「芸術」であってほしい、というのは個人的な意見なのですが、「どれだけの時間をかけてこの絵を描いたのだろう」なんて想像するだけで、ちょっと感動するのです。
この絵本を読むと「たんぽぽ」を見つけるのが嬉しくなり、お散歩に出るのも楽しくなると思いますよ♪
親が意識しなければ、五感を使う体験は失われていく
実は以前、こんな衝撃的なことがありました。
我が家は田畑に囲まれた田舎にあり、庭にはいろいろな生き物が住んでいます。
そこへ遊びに来た小学校時代の同級生(今ではパパ)と、その娘ちゃん。
パパは同じ地元の出身ですが、娘ちゃんは東京生まれ東京育ちの都会っ子。
「パパ見て!!」
急に興奮した声で叫ぶ娘ちゃんに近づくと、「カエルがいる!!本物だよ!!」と目をキラキラさせて報告してくれました。
「すごいね~!本でしか見たことなかった~」と感動したようにカエルに見入っている娘ちゃん。
その言葉に驚き、「え?東京にはカエルいないの…?」と友だちに聞くと、
「いや、そうじゃないとは思うけど…まじでヤバいよ。山村留学させようかと思ってるよ」
つまり都会では「わざわざ探しに出かけなければ、春らしい草花や生き物に出会えない」ということらしいのです。
実際に見たことがある、触れたことがある、という体験は子どもにとって最高の学び。
でも、住んでいる場所によっては自然に獲得できるものではないのだ、ということを知りました。
まずは「本物を見てみたいなぁ~」「やってみたいなぁ~」と子どもに思わせてくれるような、好奇心を刺激する絵本を読むことから、始めてみませんか?